「競合分析はやったほうがいい」とはよく言われます。ただ、何を、どこまで見ればいいのかまで説明してくれる人は多くありません。とりあえず伸びているアカウントを眺めて、なんとなく参考にして終わり。それだと時間だけが消えていきます。
この記事では、SNS運用の競合分析を「毎月30分で終わる作業」に落とし込むところまで書きます。使うのは各SNSの無料機能だけです。有料ツールは要りません。
競合分析の目的は「真似」ではない
「分析」という言葉のせいか、競合分析は「勝っている相手のやり方を取り入れること」だと思われがちです。でも、そこを目的にすると必ず行き詰まります。同じテーマを、同じ形式で、後から出しても勝てないからです。先に出したほうが有利になるのがSNSです。
競合分析の本当の目的は、まだ誰も埋めていない場所を見つけることです。
同じジャンルのアカウントを10個並べると、全員が同じ話をしている領域と、誰も触れていない領域が見えてきます。前者に飛び込んでも埋もれるだけ。後者にニーズがあるなら、そこが入り口になります。
見るべきなのは競合の強みより、競合が手を出していないところです。強みを見ると真似したくなりますが、空白を見ると自分の企画が生まれます。この視点の差が、分析の成果を大きく変えます。
どのアカウントを競合として選ぶか
最初にやることは、比較対象を決めることです。ここを間違えると、そのあとの分析が全部ずれます。
3種類に分けて選ぶ
| 種類 | どんなアカウントか | 何を学ぶか |
|---|---|---|
| 直接競合 | 同じジャンル・同じ商品を扱っている | 差別化できるポイント |
| 間接競合 | ジャンルは違うが、同じ人に向けて発信している | 企画のネタ、切り口 |
| ベンチマーク | ジャンル外だが、見せ方が上手い | 構成、テンポ、編集 |
直接競合だけを見ていると、業界内の当たり前に染まります。間接競合とベンチマークを混ぜると、その業界では誰もやっていない見せ方を持ち込めます。
フォロワー数は「自分の1.5〜3倍」を選ぶ
10万人のアカウントを分析しても、参考になりません。すでにブランドが確立していて、フォロワーが名前で見に来ているからです。同じ投稿を自分がしても同じ結果にはなりません。
選ぶなら、自分より少し上。フォロワーが1.5〜3倍くらいのアカウントです。この層は今まさに伸びている最中なので、何が効いているのかが投稿に直接あらわれます。
数は5〜10アカウント。少なすぎると偶然と傾向の区別がつかず、多すぎると続きません。
見るべきは5項目だけ
全部を見ようとすると終わりません。見る項目を先に決めて、それ以外は見ないと割り切ってください。
1. 投稿頻度と投稿曜日
週に何本出しているか。何曜日・何時台が多いか。伸びているアカウントの投稿ペースは、そのジャンルで必要な最低ラインを表しています。相手が週5本なら、週1本で並ぶのは難しいという判断ができます。
2. 投稿形式
ショート動画なのか、画像なのか、テキスト中心なのか。同じジャンルでも、伸びている形式は年単位で変わります。今そのジャンルで何が主流かは、競合の投稿を並べればすぐに分かります。
3. エンゲージメント率
フォロワー数の多さではなく、反応の濃さを見ます。計算式はシンプルです。
エンゲージメント率(%)=(いいね+コメント+保存+シェア)÷ フォロワー数 × 100
リーチ数が分かる場合は、フォロワー数のかわりにリーチ数で割ると、より実態に近くなります。
フォロワー1万人で反応50件のアカウントより、フォロワー2,000人で反応200件のアカウントのほうが、参考になることが多いです。後者のほうが「刺さる言葉」を持っているからです。
4. 冒頭の3秒
ショート動画なら、最初の一言と最初の画面。ここが再生数を決めます。伸びている投稿の冒頭だけを10本ぶん書き出してみてください。質問から入る、結論から入る、否定から入る——というように、そのジャンルで効いている型が見えてきます。
5. プロフィールからの導線
プロフィール文の1行目に何を書いているか。リンクをどこに飛ばしているか。ハイライトや固定投稿に何を置いているか。フォロワーを増やす設計ではなく、フォロワーを仕事につなげる設計がここに出ます。分析で見落とされやすい部分です。
30分で終わらせる手順
月に1回、この順番でやります。
- 競合リストを開く(3分)
スプレッドシートに5〜10アカウントを並べておき、毎月同じ顔ぶれを見ます。毎回選び直すと比較にならないので、半年は固定するのがおすすめです。 - 各アカウントの上位3投稿を見る(15分)
直近1か月で反応が多かった投稿を3本。テーマ、形式、冒頭、コメントの内容をメモします。1アカウントあたり2分で切り上げてください。 - 共通点を線で結ぶ(7分)
複数のアカウントに同じ要素が出ていたら、それは偶然ではなくジャンルのトレンドです。1つのアカウントにしか出ていない要素は、そのアカウント固有の武器なので分けて考えます。 - 空白をメモする(5分)
誰も触れていないテーマ、誰も向き合っていない層。ここが次の1か月の企画になります。
大事なのは、時間を区切ることです。競合分析は時間をかけようと思えばいくらでもかけられます。かけた時間と成果が比例しない作業なので、30分で切ってください。
分析結果を投稿に変える
分析して満足してしまうのが一番もったいないパターンです。メモを企画に変えるところまでを1セットにします。
やり方は、見つけた要素を「型」と「中身」に分けることです。
- 型=構成、冒頭の入り方、テンポ、テロップの出し方。これは真似していい部分です。型は誰のものでもありません。
- 中身=具体的なテーマ、実体験、数字、事例。ここは絶対に自分のものを入れます。
型を借りて、中身を自分で埋める。これがパクリと参考の境界線です。中身まで持ってくると、見ている人にはすぐ伝わります。SNSは、同じ話をしている人が並んで表示される場所だからです。
やりがちな3つの失敗
失敗1:分析が目的になる
シートは綺麗になったのに投稿が増えていない、という状態です。分析は投稿を良くするための手段なので、分析に使う時間が投稿に使う時間を超えたら本末転倒です。
失敗2:見るたびに落ち込む
競合分析は精神的にしんどい作業でもあります。伸びている人ばかり見ることになるからです。数字ではなく「どう作っているか」だけを見ると決めておくと、比較で消耗しにくくなります。
失敗3:1回やって終わる
SNSのトレンドは数か月で変わります。半年前の分析結果を前提に運用していると、気づかないうちにズレていきます。月1回、同じ相手を見る。これだけで変化に気づけます。
よくある質問
Q. 競合が少ないジャンルはどうすればいいですか?
直接競合がいない場合は、間接競合とベンチマークを厚めに見ます。「同じ悩みを持つ人に向けて発信しているアカウント」を探すと、ジャンルが違っても参考になります。競合がいないこと自体は、市場がないのか、まだ誰も来ていないだけなのか、両方の可能性があります。
Q. 無料でどこまで分析できますか?
公開されている投稿と、各SNSの公式アナリティクス(Instagramのインサイト、TikTokのアナリティクス、YouTube Studio)で、この記事に書いた5項目はすべて確認できます。有料ツールは、複数アカウントをまとめて管理する段階になってから検討すれば十分です。
Q. どのくらいで結果が出ますか?
分析そのものは即効性のある作業ではありません。ただ、投稿の企画に迷う時間が減るので、続けやすさには早い段階で効いてきます。ネタ切れで止まるアカウントは多いので、そこを防げるだけでも意味があります。
まとめ
競合分析は、相手に追いつくための作業ではありません。自分がどこで戦うかを決めるための作業です。
5〜10アカウントを固定して、月に30分。見るのは投稿頻度・形式・エンゲージメント率・冒頭3秒・プロフィール導線の5つだけ。型は借りて、中身は自分のものを入れる。この形にできれば、毎月の企画に迷わなくなります。